あすなろ学園の熱い夜

callithump2006-07-24

朝7時に起きて、ダイちゃんといっしょに江差漁港の先にある鴎島を散策。島とはいっても江ノ島のように地続きになっていて、島の中を巡る遊歩道が設置されていて、それを辿りながら漁港側の浅瀬で生物を観察したり、崖の岩の亀裂に営巣しているカモメの雛を見たり。外海側にある灯台近くの「千畳敷」と呼ばれる岩場の景観が美しい。2時間ほど歩いたところでにわか雨が降り出したので、島の突端に続く遊歩道を制覇するのは諦めてホテルに戻る。

今日のライヴの会場は知的障害者のための厚生施設「あすなろ学園」の体育館のようなホール。観客はもちろん、この学園の園生たち。学園には障害者のための授産施設も併設されていてパンや弁当を作っているそうだが、我々の昼食としてホテルに差し入れられた弁当も楽屋のケータリングに供された軽食もここの製品。どちらもとても美味しかった。

会場入りして、先ずはサウンド・チェック。天井が高く残響のやや長いホールの鳴りと函館から出張ってもらったP.A.屋さんのしっかりした音作りの相乗効果もあり、うねるような、いつもにも増しての大音量。途中、コピーをとらせてもらいに行った別棟の事務室でもはっきりと歌詞が聞き取れるくらいに音が大きい。ちょっと心配になってそこにいた職員の方に、「僕らはいつもこんな感じなんですが、こんなに大きい音でも大丈夫でしょうか?」と訊いてみる。「大丈夫ですよ。みんな音楽が大好きですから。今日もとても楽しみにしていますのでよろしくお願いします」と、にっこりと笑いながら即座の返事。オーディエンスが障害者でも、そのことにおもねったようないつもの表現とは違う演奏をミュージシャンに強いることはしたくないと思っていたのでありがたい。「では、力いっぱいやらせていただきます」と言って事務室を後にする。

とはいえ、「演奏が長いと園生たちの集中力が続かないので」との学園からの要望を受け、1時間半のプログラムを休憩を挟んだ2部構成に分け、コミュニケーションがなるべく一方通行にならないよう、いつもよりMCを多く配したセット・リストを作成。今回のツアーでは、たたみかけるようなアグレッシヴな構成を心掛けているが、演奏はいつも通りでも園生と歩み寄りやすいよう幾分かの配慮。

会場には園生と職員合わせて200人以上が詰めかけ、ほぼ満席。園生数人によるアフリカン・パーカッションのアンサンブルによる短いフロント・アクトの後を受け、いよいよ本番。大音量に完全に耳を塞いでしまった子が3人ほどいたが、ほとんどの園生がまっすぐにステージを見つめながら、またはリズムに合わせて身体を動かしたり、手拍子をしたりしながら一生懸命に聴いてくれている。そして曲が終わるたびに大きな拍手と歓声。耳を塞いでしまっていた子たちも、最後まで席を立たずにその場にいてくれた。アンコールでは数人の園生が最前列に出てきて踊り出し、勢い余ってステージに上がってしまう子も。最後は客席も巻き込んだ「I Love Rock'n Roll」の大合唱で大団円。どのように受け入れられるのか?、もしくは受け入れられないのでは?という心配はあっさりと杞憂に終わり、熱い夕べになった。

終演後は、今日と初日の函館公演をコーディネートしていただいた浅野さんも交え、ホテルの向かいの居酒屋「江差会館」で打ち上げ。新鮮な朝獲れのイカの刺身や煮付けのほか、さまざまな地の魚介類に舌鼓を打ち、漁港の町にいることを実感。